不動産価格に影響を与える要因
不動産価格が様々な要因により決定されていることは想像がつくので、どの要因がどのように影響を与えているのかを調べてみます。
調査対象となる要因は、前回までに収集したデータに含まれる情報から適当に選びました。
とにかくはじめます🍛
地域
すでに地域については前回、地図上に表現することで可視化を行いましたので、ここでは各地域ごとの平均価格を並べてみました。
点線で取引件数も併せて描画しましたが、取引が多いほどその需要があるためか、平均価格も高い傾向にあるようです。
時間
時代によっても価格が変動しているはずなので、その価格の遷移を見てみましょう。
4半期ごとに全体の平均を取ったグラフがこちらです。
年ごとに全体の平均をとるとそのトレンドがさらに明確になります。
どうやら2013年を境に価格が一気に上昇しているようです。 2013年は新語・流行語でもある「アベノミクス」の年で、日経平均も1年で56.7%も上昇しています。1
当然ながら大阪の不動産価格も、日本経済の影響を強く受けるようです。
地域+時間
時間的な変動を地域ごとに見てみることもできます。
まず各地域における、年間の平均上昇幅をプロットしてみます。 ただし平均上昇幅といっても、各年の上昇幅を平均したわけでは無く、価格変動を線形回帰した場合の傾きを使用しました。 (傾きを利用した明確な理由は無く、ただどうなるのか見てみたかっただけです。)
この傾きは、ある意味では各地域の平均的な上昇幅を表しているため、TOP3の地域を見ると確かに上昇傾向が見られます。 このあたりが特に価格を引っ張り上げているようですね。
とはいえ上昇幅の小さい地域が、すべてが下降傾向にあるという結果にはなりません。 むしろ近年は上昇している地域も含まれています。 価格が単純で線形的な増減をしているわけでは無いので、当然の結果です。 よって上記のプロット結果もあくまで参考程度に考えておいてください。
より厳密な時系列解析は別の機会にやりたいと思います。
築年数
個人的には物件価格において、大きな要因を占めていると予想されるのが築年数です。 新築と中古の違いも、いわば築年数という枠組みで考えられます。
ただ収集したデータには築年数が含まれていないので、まずは築年数を算出する必要があります。 といって、単純に取引時期から建築された時期を引くだけです。 なお築年数がマイナスになる物件がありましたが、これは新築物件だと思われるため、築年数としては0で考えます。
上記の条件でプロットすると… (薄いバンドは95%信頼区間を表しています。)
なんだか50年目以降がかなり不規則ですが、これは築年数の分布をプロットすると答えが分かります。
まず新築を除くと築10年目ぐらいの物件が良く取引されているようですね。 そして50年目以降の物件がほぼ無いことから、先ほどの平均値はほぼ個別物件の値であり平均値としてはふさわしくないことも分かります。
よって50年目以降を対象外として再プロットすると、築年数が増すほど価格が減少していく様をグラフが描いてくれます。
なお25年目付近から価格減少のスピードが弱くなることや、価格ピークが3、4年目にある点もなかなか興味深いですね。
価格減少のスピードについては、住宅ローン減税制度の対象要件である20年以内(耐火建物は25年)とも関係がありそうですね。2
リフォームの有無
例え築年数が古くとも、リフォームすることで生まれ変わる可能性があります。
そのためリフォームの有無も大きな要因と考えられるため、さきほどの築年数のグラフに対してその要因を加えてみましょう。
築年数が増すほど、リフォームによる効果は大きいようです。
面積
次に物件の面積を見てみます。 収集されたデータの面積とは以下の定義です。
「中古マンション等」は、登記簿に記載されている専有部分の床面積(㎡)(壁その他の区画の内側で測定(内定)された面積)を採用しています。 いずれの場合も、10㎡未満の小規模な面積の物件については公表していません。 なお、200㎡未満は「5㎡刻み」、200㎡以上は上位3桁目を四捨五入し上位2桁を表示、2,000㎡以上の大規模取引は「2,000㎡以上」(ただし、「農地」「林地」の場合は5,000㎡以上の大規模取引について「5,000㎡以上」)と表示しています。
面積が広ければ価格も高いとの予想がつきますが、まずは広さの分布を見てみます。
ご覧のように最大700㎡(小学校のプール2つ分より広い)まであるようですが、150㎡よりも大きい物件は10件程度しかないようでかなりばらつきがあります。
なので何も考えずにプロットすると、面積が大きい範囲はかなり個別物件の影響に引きずられます。
広くなればなるほど単純に価格が上がるわけでも無いようですね。
ただし取引件数が多い部分だけに注目すると、きれいな相関が観察されるので、この点は予想通りです。
なお50㎡手前で価格が落ち込んでいる理由として、こちらもやはり住宅ローン減税制度の対象が50㎡以上という要件と関係していそうです。2
つまり50㎡手前の物件を買う場合、トータルコストで考えると50㎡以上の物件のほうが魅力的だと思う人が多いのかもしれません。
間取り
必ず大手の不動産検索サイトでも、間取りによる絞り込み条件機能が付いています。 間取りも当然、不動産価格に大きな要因を与えるはずです。
間取りとその平均価格のプロット結果が以下です。
間取りの種類てこんなにたくさんあるんですね。
折れ線が取引件数なわけですが、3LDKってこんなに多いんですね。 価格帯も中央に近く、3LDKはもっとも人気がある間取りといえそうです。
価格の傾向としては部屋数が多いほど価格が高いようなので、部屋数との関係を見てみます。 ちなみに3LDKは4部屋と数えています。
なお部屋数6個以上は取引件数が少ないので、網掛けにしています。
網掛け部分は事例が少ないので無視すれば、やはり部屋が増えるほど価格は上昇するようです。
LDKSの有無による効果
ではL(リビング)、D(ダイニング)、K(キッチン)、S(納戸)の有無によって、どの程度価格が変わるのでしょうか? というわけで、それぞれの部屋がある場合と、無い場合での平均価格を以下のように表現してみました。
これよりリビングとダイニングの効果はほぼ同じことが分かります。 一方キッチンの有無は価格に大きな影響を与え、その差として1千万以上の価値をもたらしています。 なお納戸の有無はそれほど価格を引き上げる要因にはなっていないようです。
最寄駅までの時間
最寄り駅まで近いほど利便性が高いため、やはり物件価格に大きな影響を及ぼすと思われます。
60分以上の物件購入者は、そもそも普段から徒歩の利用を考えていないと思われるので、60分以上は一律60分として扱っています。
やはり駅チカ物件はかなり魅力的なようですね。
最寄り駅の路線
最寄り駅が属する路線による違いはあるのでしょうか? 路線の情報は無いので、以下のサイトから最寄の路線をあらかじめ求めました。
これは地域との関係で見えた傾向が、そのまま反映されているように感じます。
都市計画との関係
役に立つかは分かりませんが、都市計画との関係も見ておきましょう。
工業地域が高いのは意外かもしれませんが、工場跡地が活用されタワーマンションなどはココに建つことも多いらしいです。 またあくまで実績ベースなので、高いマンションに限り売れているとも考えられます。
コンビニの数
最後に周辺のコンビニの数が、価格に影響があるかを調べました。 コンビニが多いほど利便性が高いと考えれば、価格が上昇する可能性はあります。
コンビニの情報は以下から収集し、緯度経度は前回同様に Google Maps Platform を利用しました。
ただ大阪だけのコンビニを収集すると、県境にある場所は不利になるので、大阪府と隣接する都市のコンビニ情報も集めました。 隣接する市区町村は以下のサイトを参考にさせていただきました。
そして位置情報から距離を求め3、1kmは徒歩15分の基準で徒歩時間を算出しました。(どうでもいいですが私はもう少し早く歩きます)
その結果が以下です。 なおX軸が0の物件は徒歩15分圏内にコンビニが存在しない、X軸の値が15の物件は徒歩15分圏内にコンビニが1~15存在していることを意味します。(コンビニ数が0という特徴を強調するため)
確かにコンビニ数が増えれば増えるほど、物件価格が上昇していることが確認できます。
ただ上記のグラフでは最後で少し下がっていますね。
そもそもコンビニの数が100個ある地域と、120個ある地域で利便性にそこまで差がでるでしょうか? どちらも十分に都会だと思われるので、グラフの右側はあまり信用できないと思った方が良いのかもしれません。
まとめ
- 2013年を境に価格が上昇
- 地域により価格上昇の仕方に違いがある
- 築10年目付近が盛んに取引されている
- 築年数とともに価格は下がるが25年目付近で少し落ち着きだす
- 築年数が増すほどリフォームによる価格上昇は大きい
- 広いほど価格も上昇するが、50㎡手前で少し下がる
- 住宅ローン減税制度が物件価格に影響を与えている可能性が高い
- 3LDKがもっとも人気がある
- 部屋数が多いほど価格は上昇する
- キッチンの有無で価格は大きく変わるが、納戸ではそれほど変わらない
- 最寄駅に近いほど価格が上昇する
- コンビニが多いほど価格が上昇する